「いつも締め切りに追われてしまう」そんな人がミッションを成し遂げるために克服しておきたい3つの心理メカニズムについて
人生にはさまざまなミッションがある。「嫁さんのヨーグルトを買って来る」そんなミッションであれば、タバコをポケットにつっこんで、ブツブツ文句を言いながらコンビニに向かえばいいだろう。
しかし、「結果」と「成果」が求められる重要なミッションであれば、万が一締め切りに間に合わなければ多くの人に迷惑をかけてしまい「考えが甘い」「責任感が無い」「自己管理ができていない」といった”ダメな奴”というレッテルを貼られてしまう。
そんな極度のプレッシャーが圧し掛かってくるミッションに取り組むとき、肝がギューっと縮こまり、自分でも顔面から血の気が引いていくのが分かる。「逃げ出せるものなら今すぐにでも逃げ出したい」そんな気分だ。
でも・・
重圧とプレッシャーを押しのけミッションを成し遂げたとき、人知れず左右の目尻からこぼれ落ちそうになる雫の重みは、言葉では言い表せないような恍惚感を与えてくれる。(この感覚はきっと、実際に体験したことがある君にしか分からないことだろう。)
そして3ヶ月前よりもずいぶんと成長した自分で、次のミッションへと挑むことができるようになる。
それなのに、それなのに、どうしても尻に火がつかないとやる気が出てこない。仮にそれが、自分自身で決めたスケジュールだとしても、ズルズルと先延ばしになり自己嫌悪に陥ってしまうのであれば・・
「部屋を掃除して頭をスッキリする」「やるべきリストを作る」「責任感を持って完璧に仕上げる」
これらの自分の行動や考え方を客観的に見つめ、そこに潜む3つの心理メカニズムを克服していこう。
部屋を掃除して頭をスッキリする
重要な仕事に取り組むときには、膨大なエネルギーと集中力が必要になる。もし部屋やデスクの上が散らかっているようなら、とてもじゃないが集中することはできない。そのため部屋やデスク周りを片付けて頭をスッキリさせることは大切だ。
しかし・・
もし、締め切りが迫っているときに限って、部屋を掃除し始めたり、デスクの上を片付けようとするなら、それはセルフ・ハンディキャッピングではないかを確認してみよう。
セルフ・ハンディキャッピング
セルフ・ハンディキャッピングとは、アメリカの心理学者エドワード・E・ジョーンズが提唱した
自分の失敗を外的条件に求め、成功を内的条件に求めるための機会を増すような行動や行為の選択のことを指す概念
のことだ。
高校の期末試験前になると「やべー昨日全然勉強しなかったよー。」と、あらかじめテストの点数が悪かった時の言い訳をしておくアレのこと。
これをしておくことによって、「たまたま勉強する時間がなかったから(自分に能力が無いのではなく)点数が悪かった」という自分自身にハンデを与えることができる。
そして、試験前日や締め切りギリギリなのに、いつもならやらないような部屋を掃除し始めるのは、まさしく「失敗する可能性を高めるための機会を無意識レベルで作り出そうとするセルフ・ハンディキャッピングから来る行動」だと言える。
実際のところ、意識レベルでは”やらなければならない”ことは分かっているのに、何もやっていない自分には嫌悪感を感じてしまう。そのため「仕事に集中する環境を作るために片付けをしている」という体裁があれば、”何かをやっている気分”になり安心感を得ることができる。
でも、ミッションを成し遂げるために必要なのは、ひとときの安心感ではなく「結果」と「成果」だ。
そして、このセルフ・ハンディキャッピングが癖になってしまうと「妻の機嫌をうかがわなければならないから…」「体調が悪くて・・」といった、次から次へといくらでも言い訳が思い付くようになる。
これの厄介なところは、、「掃除しなければならない散らかった部屋」や「機嫌を伺わなければならない妻との関係性」「重要なミッションに挑もうとするときに限って体調を崩す」といった状況を”どういうわけだか自ら生み出してしまう”ところにある。
結果と成果が求められる重要なミッションに取り組んでいる人は、きっと“常に”重要なミッションに取り組んでいる。そういった人の日常には言い訳の入り込む余地などない。
つまり、締め切りギリギリになってから部屋を掃除をするのではなく、いつでも集中できるように「部屋の状況」「人間関係」「時間をコントロールできる環境」を、日ごろから整えておかなければならないということ。自分に対しての言い訳ができない環境を作っていくことも、僕らにとって人生レベルでのミッションだと認識しておこう。
やるべきリストを作る
仕事には【簡単な仕事】と【難しい仕事】がある。もう少し掘り下げていくと・・
- 【取りかかればすぐに片付く問題】と【長期的に取り組まなければならない課題】
- 【頭を使わずにできるルーチンワーク】と【脳みそをフル活用して絞り出すクリエイティブ】
- 【自分ひとりの責任で完結するタスク】と【共同で築き上げていくプロジェクト】
など、さまざまだ。これらの後者にあたる【難しい仕事】をミッションと呼ぶのであれば、そのミッションを成し遂げるため、手当たり次第に仕事を始めるのではなく、まずは何から始めるべきか?を把握するために「やるべきリスト」を作って頭を整理する必要がある。
しかし・・
この「やるべきリスト」を作っただけで、なんか満足してしまうことはないだろうか?それはモラル・ライセンシングが影響しているかもしれない。
モラル・ライセンシング
モラル・ライセンシングとは「良い行いをした後に悪い行いをしたくなる心理」のこと。ダイエットをしたことがあれば、体重計に乗ったらちょっと体重が減ってたから「今日はちょっとくらい良いかな?」と思って、ビールを片手にハンバーガーにかぶりついてしまった経験もあるだろう。
これは「良いことをしたら悪いことをしたくなる」という単純な話しではなく・・
「頑張った後にはサボりたくなる」「勉強をした後にはゲームがしたくなる」「ひとつ作業が進むたびにYoutubeを見てしまう」といった、抑圧された状況を開放したい情動に駆られ、ミッションとはまったく関係の無い欲求がヒシヒシと芽生えてくるから、これがまたなかなかの曲者だ。
たいていの人は、目標に向かって進歩すれば、それを励みにさらなる高見を目指すはずだと思っていますが、私たちは誰でも少し進歩すると、それをいいことについサボりがちになってしまうことを、心理学者たちはよく知っています。…中略…
目標達成の大きな味方であるはずの「やることリスト」でさえ、じつは油断になりません。プロジェクトのために抜けモレのない完璧なやることリストを作成したら、何だかものすごく達成感があって、今日の仕事はこれでおしまいだ、なんて思ったことはありませんか?
心当たりがあるのは、あなただけではありません。実際はこれから何をすべきかがはっきりしただけなのに、リストを完成させた達成感があまりにも大きくて、あたかも目標に向かって前進したかのように満足してしまうのです。 【スタンフォードの自分を変える教室】
「やるべきリスト」は、あくまでもミッションを成し遂げるための手段だ。
「やるべきリスト」ができて満足するのではなく、「やるべきリスト」が完成したその瞬間の高揚感を原動力にして、一つ目のやるべきことに取り掛かってしまおう。自分に褒美をやるのはその後でも遅くはないだろう。
責任感を持って完璧に仕上げる
ミッションを成し遂げるためには、”責任感”は最も重要な要素であることは誰もが知っている。もしそれが「自分一人ではなく複数人の共同で築き上げていくプロジェクト」であったり「期日が決められている顧客に提供するべきサービス」であれば、なおさらだ。
そのため、自分に与えられている仕事であれば「締め切りまでに自分一人で完璧に仕上げる」という責任感は持ってしかるべきである。
それなのに、どうして?「いつも締め切りに間に合わない」のだろうか。それはパーキンソンの法則というものを知っておく必要がありそうだ。
パーキンソンの法則
パーキンソンの法則とは、イギリスの歴史学者であるシリル・ノースコート・パーキンソンが提唱した
仕事の量は、完成のために与えられた時間をすべて満たすまで膨張する
という法則のことだ。
個人レベルの話に置き換えれば、「締め切りが決まっていればその期限ギリギリまで使って仕事をしてしまったり、締め切りまで余裕があればその分先延ばしにしてしまう」そんな人間の甘えや心理状態を、パーキンソンの法則はうまく言い表している。
もしかしたら君も小学生の頃、夏休みの”最終日”になると、宿題(日記を書くこと)に追われて泣きべそをかいた記憶があるかもしれない。
つまり、仕事におけるそれぞれのミッションは、その内容や量、難易度などを踏まえ、予想外の事態を想定したうえで期日が決められている。が、しかし・・期限を伸ばしたからといってその分”仕事の完成度”が高まるわけではないということだ。
この法則を踏まえたうえで、僕らが重視しなければならないのは「完璧さ」よりも「スピード」だ!
もちろん、与えられた期日までに自分一人で完璧に仕上げることができるのであれば、言うことはない。しかし、共同で築き上げていくプロジェクトであれば、自分だけの感覚で完璧かどうかを判断することはできない。つまり完璧なものを作り上げることは事実上不可能。
ようするに、時間があるから完璧な仕事ができるのではなく、できるかぎりスピードを上げ、期日までに”完璧に近づけられるように”仕事をするべきなのだ。
もしも「期日までに自分一人で完璧に仕上げることだけが自分の責任だ」と考えていると、自分の力だけではどうにもならない(完璧に仕上げられない)状況のときには、その場しのぎの仕事になってしまい、そんな手抜き作業は1発でバレて(簡単に見透かされて)しまう。
だからこそ、デッドラインは自分で決めて「なるべく早く他のメンバーからのフィードバックがもらえるように仕事をして、期日までにブラッシュアップしていく」ことのほうが重要だということ。
場合によっては、「自分以外の人に助け舟を出してもらってでも、締め切りまでに妥協のない仕事を完成させる(完成度を高める)こと」これが僕らにとっての責任感だと言えるだろう。
3つの心理メカニズムについてのまとめ
ここでは、いつも締め切りに追われてしまう人がミッションを成し遂げるために克服しておきたい3つの心理メカニズムについて解説してきましたが、「いつも締め切りが間に合わなくなってしまう」のは、自分の怠け心や責任感の欠陥が原因だと自らを責める前に・・
- 言い訳は次の言い訳を思い付くようになり、できない環境を生み出してしまう
- ちょっと頑張った後にはサボりたくなってしまう
- 期限までに余裕があればその期限まで仕事は増えていってしまう
そんな”人間だれしもが持っている性質“を理解したうえで、「セルフ・ハンディキャッピング」「モラル・ライセンシング」「パーキンソンの法則」を克服していきながらミッションを成し遂げられる人間へと成長していこう。