柔軟な思考を大切にしたいクリエイター必読の5冊。私の頭をグニャングニャンに柔らかくしてくれた本のまとめ。
1年の終わり、年の暮れ。
無造作に並べられた本棚を整理がてらカテゴライズしてみるとこれがなかなかおもしろい、「自分はこの1年いったい何を求めていたのか?」が手に取るように分かる。
危険思想とは常識を実行に移そうとする思想である。 芥川龍之介
実践的ビジネス書の間にちょくちょく紛れ込む数冊をまとめてみると、なにやらひとつのカテゴリができあがったのでこれを、「凝り固まりがちな私の頭をグニャングニャンに柔らかくしてくれる本」と名付けて読み返してみよう。
HELP! 最強知的“お助け”本
ビジネスの名著を名指して安っぽい詐欺まがい自己啓発思想を世間に流通させた原因となったと言い切り、「幸福の秘密をこっそり教えてやろう」と言って近づいてくる人物には用心したほうが良いと皮肉たっぷりにあの超ベストセラーもバッサリ。
欲しいと思う高価な品物を手に入れる場面でひたすら想像する人々のひたむきな姿・・・ポジティブな考え方の人は絶えず神経を張り詰めて、物事がうまくいくよう自分を追い詰める・・・なんでもできると信じることは、麻痺状態に陥る原因である。P.276~P.277
さまざまな自己啓発本の盲点にメスを入れ込む洞察力もさることながら、それでいて単なる批判本に陥らないのは、間接話法を取り入れた正当性と客観性を裏付ける言い回しのテクニック、それと著者独特のユーモアセンスによるところが大きいように感じる。
自己啓発書は自身をモチベートする際にステロイド的効力を発揮するものの、外的刺激によって高揚した自分を客観視すればやはりどこか薄気味悪い。そんな他視点と柔軟な思考を大切にしたいひとにもってこいの痛快な1冊。
なぜ間違えたのか? 誰もがハマる52の思考の落とし穴
サブタイトルの通り、52の思考の落とし穴について展開される不合理な行動パターンを自覚することで、著者の言うように自ら招く災いに対する保険に成り得るかもしれない。
「思考の落とし穴」を自覚していれば、大きなダメージを受けるのを防げるようになり・・・他人が賢くない行動をとっていることにすぐ気がつくようになり・・・考え方のワナである不合理の怪物を追い払うことができた。P.4
いかに私たちが普段イメージや先入観念でものごとを判断しているか?を考えさせられます。
【希少性の錯覚のワナ】【アンカリングのワナ】【ハロー効果のワナ】の行動パターンでしばし広告で利用されているため、余計なものを消費しないために自覚することも、広告する側として有効的に活用することもできる。
マルクスはメガネをかけている痩せた男性で、モーツアルトを好んで聴く。さて、どちらの可能性が高いか?①マルクスはトラックの運転手。②マルクスはフランクフルトにある大学の文学部の教授。P.159
書籍全体の印象は決してお堅いソレではなく、目を惹く挿絵が印象的でとっつきやすい。それに結構ふわっとして腑に落ちないところが読者の考えに含みをもたせているようにも感じられる。
個人的には【お抱え運転手の知識のワナ】が1番のツボ。
嫌われる勇気 自己啓発の源流「アドラー」の教え
自分勝手に生きている人を自己中心的としている風潮に対し、私のことを好き、嫌いという想いは他者の自由意思で行われるべきことで、嫌われないように振る舞おうとすることこそ相手の気持ちに介入しコントロールしようする自己中心的な考えであることを再認識することができた1冊。
特に【課題の分離】はもやもやしていた部分を見事に言語化されていて、人間関係に悩み苦しむ人に限らず、自己表現を生業とするアーティストやクリエイターにとっても必須な心の指針を伝えている。
他者の評価を気にかけず、他者から嫌われることを怖れず、承認されないかもしれないというコストを支払わないかぎり、自分の生き方を貫くことはできない。つまり自由になれないのです。P.163
2014年を代表するベストセラーをここで解説するまでもないですが、対話形式で読みやすく承認欲求の呪縛から逃れ想いのままに自己表現をしたいひとにとっての必読書?
世界を変えた伝説の広告マンが語る 大胆不敵なクリエイティブ・アドバイス
広告業界に携わる人に限らず、クリエイターならいつでもカバンの中に潜めて持ち歩きたい、言語・写真・挿絵で構成される書籍そのものがクリエイティブな1冊。
116 : 創造しているときこそ、もっと幸福であれ 答えを激しく求めて探し出すという創作過程における喜びは、ついにビッグ・アイデアにたどり着いたときには天にものぼる幸せとなる。
哲学で自分をつくる 19人の哲学者の方法
哲学の「て」の字もない私が最低限の知識として手に取ったのものの、読者との対話を試みる著者の姿勢は読み手をおいてきぼりにすることなく、現代に悩み生きる私達へ19人の哲学者の思考を用いて「思考の力を磨く」ことを提唱している。
読み手によって「あー自分はこの人の考えが近しいな~」というそれぞれ違う哲学者が浮かび上がってくるハズ。
今の私にとっては【フリードリヒ・ニーチェ】【アンリ・ベルクソン】【ジャン=ポール・サルトル】の思考に惹かれる傾向にある、が、噛みごたえのあるぶ厚いスルメのようにまだまだ味わい続けることができ、飲み込むまでには至らない。
特に大きな不満があるわけではない。不自由というほどでもない。すごい充実感はないが、かといって物事を突き詰めたり、一生懸命努力するのも嫌だ。でも少しでもいいから、これだ、という手ごたえが欲しい P.330
ビッグチャンスが訪れることを期待するような意識より、日常の微細な差異のなかに手ごたえを見出す手掛かりがあると【ジル・ドゥルーズ】は教えようとしてくれているのかもしれない。
大胆不敵とは対極の微細な差異を感じとれる知性もまたクリエイターには大きな武器と成り得るだろう。また、著者は前書きでこのようなエールを送ってくれている。
もちろん、「常識」も大事である。鵜呑みにするのがよくないだけである。いろいろと考えた末に、「常識」的な考えに立ち戻ってもかまわない。「常識」以外にも別の視座を持ち、力強く21世紀を生き抜けるよう、願ってやまない。 P.7